By GRL Team on 8月 19, 2020

試験アウトソースのポイント第3回:コンプライアンス試験にも「綾」がある!

連載企画:試験アウトソースのポイント<全5回>

新型コロナウイルスの影響により多くのお客様がテレワークなどに移行する「新しい仕事」の時代が予想されます。具体的には,開発の現場においても,計測試験をアウトソースする動きがより活性化してくると考え,皆さまにそのガイドとなるべく5回の連載で,解説をしていきたいと思います。

 

<第3回>コンプライアンス試験にも「綾」がある!

ここでテーマとする「コンプライアンス」とは「規格準拠」と訳すもので,世の中でもっと一般的な「企業コンプライアンス」が指す「法令遵守」に対してずっと狭義のものです。カタカナで使われているためか,使用方法が前回この冒頭で述べた“Certification”(=「認証試験」原義「第三者による試験」)と混同して使われることが多くみられます。前回テーマとした試験仕様書(CTS)に沿って,開発者自身が計測器などを用いて試験対象が規格の要件を満たしていることの確認は,コンプライアンス試験と呼んでも構わないことになります。一方,試験外注をするということは本来の意味での“Certification”を受けることとなります。

禅問答のような前書きとなりましたが,「コンプライアンス試験」と「ロゴ認証試験」についての違いを明記しておきます。

 

  • 認証試験

    ・ ロゴ試験と呼ばれるもの
    ・認証取得品は,規格団体が課する試験に合格したもので,団体から認証というお墨付きをあたえられる
    ・ 電気試験として,コンプライアンス試験を含む
    ・プロトコル試験や相互接続性試験を含むことが多い

  • コンプライアンス試験

    ・ 規格準拠を確認する電気試験で,上記の認証試験と同じものとは限らない
    ・ 実施者は問わない。
    ・試験仕様書は,規格仕様に沿って策定されている

本稿では,「コンプライアンス」について,少々解説したいと思います。そして「コンプライアンス試験」として全項目を行う必要はありますか?という点を一緒に考察していただきたいと思います。

 

目次

コンプライアンスが想定している対象とは?

・お客様の開発機器を確認してみましょう

・弊社が提案するコスト削減案

 

コンプライアンスが想定している対象とは?

コンプライアンスが想定している対象は,その規格が想定している機器構成に従います。シンプルなケースしかないと思ってください。例えば,ほとんどのPCのドライブとして使用されているSATAのホストは,マザーボードそのもの,または,PCI-expressでマザーボードと接続するアドインカードが想定されています。そこでのCTSの電気試験では,最初の第一世代(Generation1:Gen1)の1.5Gbpsから現在で標準となっている第三世代(Gen3)である6.0Gbpsまでの試験を実施することとなっています。市場で販売されているマザーボードは,どのようなHDD/SSDが接続されるかはエンドユーザ次第なのでそれが必要とされています。ただ,私は第一世代のHDDというものを見たことが正直ありません。仕事でHDDを意識したときには既に,1.5GbpsのHDDは中古ショップでも見つからなかった記憶があります。1.5GbpsのHDDをPCに取り付けて使用することは,かなりレアケースではないかと考えています。キーワードの「綾」として,コンプライアンス試験とはそのようなケースまで含んでいることがあり,今一度,対象としている機器について確認することが必要に思われます。

 

お客様の開発機器を確認してみましょう

お客様が開発される機器について,もちろん,最新規格に追従している必要はなく,その価格,調達性,あるいは,安定性から,成熟した世代を使用することを考えることは妥当です。一方で,開発製品が「(マザーボードのように)どの世代がつながるかは分からない」状況となることがないケースもあると思います。SATAドライブを例にすると,製品に使用されるHDDが開発時にどの型番を採用するかが決定されることがほとんどで,その場合,世代などの動作条件は一定とすることができます。SATAホストのチップセットがGen3サポートで,採用するドライブもGen3サポートであれば,接続されるリンクは,通信品質が適正である限り,常にGen3のみでつながることとなります。

弊社が提案するコスト削減案

そうです,もうご推察のように,上述の例では,Gen3のみのコンプライアンス試験の項目を行い,通信品質が適正であることを確認することで、想定される実使用環境における検証は十分であると判断できます。広く言及すると受験機に特定の条件を課すことで,コンプライアンス試験では,全部でなく,その一定の動作条件に沿った一部の項目を行えば十分であるということが言えます。

弊社では,「ロゴ認証ではなく、(電気の)コンプライアンス試験を」というお客様に対して,規格の過去世代の伝送レート項目での試験にこだわる理由があるかを確認します。もちろん「クライアントからの指定」ということで全部を実施することも少なくありません。そういったケースであっても,想定を確認することで試験の優先度を決め,取捨選択することは,技術的に妥当で,かつ,合理的なコスト削減につながることになります。

 

関連する情報

最後に誤解を避けるためにあらためて申し上げますが、ロゴ認証試験の場合においては、実使用条件、環境にかかわらず、ロゴ認定のために定義された試験項目において、全項目の試験の実施、合格が必須です。試験ご用命の際には、ロゴ認証が必要なのか、動作確認や仕様準拠確認に重きを置いた、コンプライアンス試験が必要なのか、今一度ご確認いただき、弊社にぜひご相談ください。

 

クイズ

以下のなかで受信試験がコンプライアンスで規定されていないものは?
① PCI-express 8Gbps
② SATA 6Gbps
③ SuperSpeed USB
④ Ethernet 1000Base-T

気になる方は、GRLのTwitterをフォローしてみてください。そこに正解があるかも?

 

次回予告:

CTSの全部やその一部を実行するには,テストを実施する上での条件や受験機が通常動作とは異なる試験のための動作(試験モード)が必要になり,試験実施直前での実装では実現が困難なものもあります。次回は,開発時にも試験に向けて必要な実装の確認など意識を持っていただく必要があることをお伝えいたします。

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Published by GRL Team 8月 19, 2020